山月記 of the Contemporary

大事なのは、他人の頭で考えられた大きなことより、自分の頭で考えた小さなことだ

Good Will Hunting  感想

素晴らしい演技に溢れる映画。名作である。特にクライマックスの、Robin WilliamsがMatt Damonに、「お前は悪くない」と連呼するところは、涙が止まらない。最近臨床心理の本をたくさん読んでいるせいか、先生になってこんなことがしたいと思っているせいか、自分が自信のなかったころに重なるせいか、その言葉は僕の胸に突き刺さった。そうだ。僕たちはほんとうに、何も悪くないんだ。子供は、与えられた環境が良ければ、良い子に育つのだ。悪く言うのはどこのどいつだ?犯罪者だって、好きで犯罪している訳じゃない。歪んだ社会に生きていく中で、歪んだ心を形成しただけだ。誰が悪い?社会を作ってるお前だろう。誰かが悪いことをしていたら、それを悪いといって止めることは必要だ。でも、その裏にはその「悪」まで包み込む「愛」が必要だ。それなくしては、あなたに「悪い」と突き放されては、やりきれない。この世に居場所がない。その子の抱えている「闇」は増長するだろう。

Robin Williamsが演じる精神分析家は、「健常者」である私が、「異常者」である君を一方的に「治療」してやろうというといった態度をとらない。彼もまた、「欠陥」を抱えている人間であり、不完全な人間として、Will Hunting (performed by Matt Damon)に接する。そうして、お互いが裸の対等な人間として付き合っていく中で、患者の彼は心を開き、治療され、そしてお互いが成長していく。そんなとこが好きだ。

 

グッド・ウィル・ハンティング ネタバレあり感想&映画脚本分析 | 脚本の書き方

 

を読んだ。素晴らしい分析だ。自分が言えることは他にない。

 

といいたいところだが、それではこの映画を理解した訳にならない。つまり、自分のものになっていないということだ。主人公のWill Huntingと同じだ。天才的に記憶力、理解力が優れていて、本の内容を、「誰か」の意見を使いこなせるかもしれないが、それは彼自身の意見ではない。物語の始めに、バーであるハーバード生を非難する場面もあるが、同じことを言っている。そりゃあ、専門家とか、詳しい人に比べたら、自分は大したことを言えないかもしれない。でも、大事なのは、自分がどう感じ、どう思うかだ。

上記のURLの分析では、Willが自分の小さな世界に閉じこもっていて、他人に拒絶されるのが恐く、それ故に「人を愛し抜くことを知らない、大人の話を聞けない、友達に批判的なことを言えない、と彼は、恋人ができても、形上の友達がいても、手を差し伸べる大人が現れても、できないづくし」と言っている。自分は自分のことを大した人間だと思いたい。価値のある人間だと思いたい、思われたい。けれども、それ故に、実際に他人から評価をうけるのが恐い。何故なら、自分の作ってきたアイデンティティが崩される恐れがあるからだ。幼少の頃に十分な愛を受けてこなかった故のWillの傾向だが、これほどとはいえなくても、たくさんの人が共感できるポイントではあるまいか。

名言にも満ち溢れている映画だが、恋愛に関してのをひとつだけピックアップしよう。

「そういう小さなことが―
今では一番懐しい
僕だけが知っている癖
それが愛しかった
僕の癖も彼女は皆知ってた 
癖を欠点と考える人間もいるが―
とんでもない
愛していれば恥ずかしさなど吹っ飛ぶ
君だって完璧から程遠い 
彼女だって完璧じゃない
だが問題は―
君らが互いにとって完璧か
そこが大事なんだ」

 

以上。